台風19号とホームレスの人達の避難所問題

2019年10月12日。

台風19号の影響で関東地方は甚大な被害を受けた。

我が家は幸いにも被害は何も無く、東京都内に台風が一番接近した時は、自宅の窓ガラスが割れるかと心配するほどの暴風に襲われたが、その程度で済んだ。

 

台風の後、「ホームレスの人達が避難所の利用を拒否された」というニュースを見た。

 

台東区の事例だが、避難所を求めてやってきた路上生活者が入室を拒まれたそうだ。

理由は「住所不定の者は受け入れられない。区の決まりだ」とのこと。

 

このニュースに国民からの賛否両論が上がっている。

私は主にヤフーニュースのコメントを見たが、少なくともここに意見を述べている人のほとんどは、

・「税金を払っていないのにサービスを享受できると思うな」

・「衛生上の問題がある。あの臭いと一緒に過ごすのは無理」

・「自分から路上生活を選んでおいて、災害の時にだけ助けを求めるのはお門違い」

と、圧倒的に区の対応に賛成の様子であった。

 

このヤフーのコメントは、ある程度偏った思想の持ち主の人ばかりだと私は思いたい。だって、これが日本国民の多くの人の意見だとしたら悲し過ぎるではないか。

 

人命がかかっているときに、税金だの衛生問題などは二の次で、当然に人命が優先されるべきだと私は思う。

衛生上の問題、安全上の問題はもちろん無視できないので、部屋を分けるなりの対応は必要であろうが、やってやれないことではないはずだ。

 

また、税金の問題。

「納税していないのだから行政のサービスは受けられない」とするのならば、

生活保護受給者、非課税世帯はどうなる。

納税していないことを理由に挙げるなら、この層の避難所使用も拒否しなければ、理屈に合わない。

まして生活保護受給者なんて、非課税どころか、医療費も家賃も免除、その他手厚い行政サービスを受けており、これらは全て税金で賄われている。

税金を払っていないばかりか、ホームレスの人達よりはるかに、国の財政に負担を強いているではないか。それなのに、この人達は助けられ、ホームレスは見捨てられるのか。

 

この国には、色々な事情を抱えた人が生きている。

誰も彼もなりたくてホームレスになっている訳ではないだろう。中には知的障害を抱えているが故に、行政の仕組みを利用できないでホームレスになる人もいるそうだ。

勿論、自ら望んで路上生活を送っている人もいる。多くのコメントにもあったが「その気になれば生活保護を受けることも、労働することもできたはずなのに、その努力を怠っている」という意見もあった。そうかもしれない。行政からの助言に背を向けてきた責任はあるだろう。でもだからといって、たった一晩、避難所を求めることも許されないのか。命を奪われても仕方ない理由になってしまうのか。それは余りにも酷だろう。

 

人命がかかっているのだ。

税金やら自己責任論の云々は脇に置いておいて、「気の毒だ、何かあったら大変だ」その気持ちだけで動いてもいいではないか。それが許されない日本は、本当に冷たく悲しい国だと思う。

 

テレビでは散々「命を守る行動を」と流れてきたが、その言葉がとても白々しく思えてしまった。

 

ただただ、困っている人を助ける、手を差し伸べるということが、こんなに難しいことになるなんて。

ホームレスの人達を救わない理由を挙げ連ねるのではなくて、誰もが助かる方法を考えられる国であってほしいと、願う。誰であろうと、その命が尊重されるように。