【仕事】お客様とのランチで思うこと。

この仕事をしていると、お客様からのお食事のお誘いを多く頂く。有難いことだ。

 

つい先日も、とても良くして頂いているトルコ人のお客様とランチをご一緒した。

何ヶ国語も話せて、紳士的で優しくて、博識で頭が良く、素敵な男性だ。

大好きなお客様の1人である。

そこでの小話を少し。

 

 

店内は外国人スタッフも多くいるような、

ちょっと高級で1人では入り難い雰囲気のお店。

席に案内されるとテーブル担当のスタッフがやってきた。

私達のテーブル担当はオーストラリア人の男性で、紳士的でニコニコしていて、とても感じの良い方だった。トルコ人のお客様と外国人同士、英語で和気藹々と、簡単な自己紹介や出身地などの話しをしていた。

 

 

この日はランチのコースを頂いた。

前菜・メイン・デザートをそれぞれ選ぶスタイル。

 

前菜:ホワイトアスパラガスの冷製(2人ともこれ)

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注目したいのが上に乗っているベーコンである。

まず私のところにお皿が置かれたのだが、それを見てお客様が「OH!!」と一言。

そう、豚肉である。

トルコ人のお客様はイスラム教徒なので豚肉は食べられない。

普段からメニューの表示には気をつけているようだが、まさかアスパラガスの冷製に豚肉が乗ってくるとは思わなかったのであろう。

 

ところが、

その様子を見たオーストラリア人スタッフがすぐに気がつき、

「OH!!! of course!!!」と言って、ベーコンの乗っていない新しいものをすぐに作り直してくれた。「当然だった、気が付かなくて申し訳ない」というようなことを英語で言いながら。

 

なるほどなー。と思ったわけである。

私なんかは好き嫌いはともかく、宗教的に食べられないものがある、なんてことは普段意識していないわけだが、世界を見渡すと、そういう基準で食べるものを選ぶことはごくごく当然のことだ。

そしてそれにすぐに気付き、当たり前のように作り直してくれたオーストラリア人スタッフもまた、素晴らしいなと思うのである。

 

私だったらどうだろう。

トルコ人だとは聞いたけど、イスラム教徒だなんて知らないよ。。。それにイスラム教徒が豚肉を食べられないなんて。。そういえば世界史で習ったっけ。。。忘れちゃってたよ。。。」なんて考えそうなものである。言われればハッと思い出すが、人種と宗教と食のタブーがすぐには繋がらない。

情けないものである。

 

 

続いてメイン。

お客様はラムチョップ。

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私はカジキのグリルを頂いた。

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私はイスラム教徒ではないので気にしなくてもいいのかもしれないが、やはりどうしても、同じテーブルで食事をする以上、牛や豚を頼むのには抵抗がある。いつも、「私のことは気にせず好きなものを頼んで下さい」と言って下さるが、相手の信仰心へ敬意を払う時、敢えてそれらを注文する気にはなれないのだ。それに、シェアもできないし。

 

最後にデザート。

お客様はチーズケーキ。

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私はブランマンジェ

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実はこの時もちょっとしたやりとりがあった。

最初、2人ともブランマンジェを注文したのだが、

少ししてオーストラリア人スタッフが戻って来てこう言った。

「このデザートにはゼラチンが入っているから、気になるようなら他の物に変更できますよ。チーズケーキかチョコレートケーキはいかがでしょう」と。

※ゼラチンの原材料は豚の骨や皮。

 

そこでまた「OH~!!」となってチーズケーキに変更したのである。

これにはお客様も感激し、

「細かいことまでよく気がついてくれる。

日本はチップが無いにもかかわらず、とても親切だ。」と喜んで下さった。

 

普段日本で生活していると、宗教上の理由で食べ物を選ぶという機会に遭遇することは少ない。だがこうして、外国人の方と食事を共にすると、むしろそういう基準で食べるものを選ぶことの方が、世界的に見れば多数派なのだと思い知る。

例えばイスラム教徒は世界人口の23%、およそ17億人いるらしい。

 

 

また別の話だが、最近とても仲良くしている日本在住のタイ人の女性がいる。

世話好きで優しくて大らかで、一緒にいるととても落ち着く、素敵な女性だ。

そして彼女もまた、牛肉を食べない。

本当は焼肉もステーキも大好きなのだが、ある願い事と引き換えに、

今後一生牛肉を食べないことをガネーシャに誓ったのだそうだ。

焼肉屋さんの前を通る度「ぐぬぬぬ」と食べたい気持ちを押し殺すらしい。

タイは仏教徒が多いのだが、同時にヒンドゥー教の教えも広く浸透しているそうだ。

なるほど、ガネーシャとはヒンドゥー教の神だったか。言われてみれば、思い出すのである。

 

 

この環境で生活している中でとても感謝していることの1つに、

外国人と接する機会が多いことが挙げられる。

彼ら彼女らは私に色々なことを教えてくれる。

 

と同時に、自分がいかに無知であるかを思い知る。

そして、適当に勉強していたことを後悔する。

 

学生の頃学んだはずの世界史や地理がこんなにも重要だったとは。

テスト勉強のためだけではなく、もっとちゃんと、学んでおけば良かった。

「世界史と地理は捨てた。国数英に賭ける。」なんてバカなこと言ってたな。

世界史を知っていれば彼らの宗教や、歴史について、もっと深く話すことができるのに。

 

地理が分かれば、トルコやタイが世界地図のどの辺にあるのか、隣接している国の名前なんかで、会話が盛り上がるかもしれない。

タイ人の女性は、出身地がラオスとの国境付近で、幼い頃ラオス語をよく耳にしていたため、ラオス語が理解できるそうだ。

(ああ、タイとラオスって隣り合っていたんだな)と、こんなことでさえ、この時初めて知った。いや、勉強したはずだが忘れているのだ。

 

会話の端々で分からないことが多く、気になったことは後から調べる。

でも最初から知っていればもっと興味深く聞けるし、相手も楽しいだろう。

前提となる知識が足りない、無知な自分にストレスを感じるのだ。

 

 

もちろん2人とも、聞けばなんでも優しく教えてくれる。

でも、私はもっと彼ら彼女らと会話をする上で、知っておくべきことがたくさんあるのだと痛感する。

私だって、日本のこと、言葉、食べ物、歴史、知っていてもらえたら嬉しいし、

そこから会話も弾む。

だからきっと、あちらだって同じはずだ。

 

なので、もっともっと勉強しようと思う。

大好きな人たちともっと沢山、楽しい会話をするために。

こんな幸せな学びの動機は、なかなか無いのだから。

 

そんなことを考えた、お客様とのランチなのであった。