【仕事】家賃滞納者について

前回は仕事の話しといいつつ結局食べ物の話しに終わったので、今回は正真正銘仕事の話しを書いてみよう。

 

私の仕事は不動産屋である。

 

いわゆる「地場の不動産屋」というもので、地域に密着して不動産業を営んでおり、駅前にあるようなチェーン店とかフランチャイズのそれとは毛色が少し違う。

会社の周辺にあるビルの大家さん、或いはそこの入居者さんがお客さんであり、

空室が出たらテナントの募集、契約、入居後もずーっと、退去するまで何かあれば駆けつける。

 

エアコンが壊れたとか、トイレが壊れたとか、水道の調子が悪いとか、賃料が入らないとか、大家がうるさいとか、入居者がうるさいとか、自分のビルの前の道路にゴミが落ちているとか・・・・え、それうちに言うこと?と思うようなことも、とにかく何でも、どんなことでも巻き込まれる。要するにビルと大家と入居者の「何でも屋さん」か。

 

 気苦労は絶えないが、楽しさや喜びも多い。

その中でも今日は気苦労の最たる例であると言えよう、家賃滞納者についてだ。

 

私の経験から滞納者には3パターンある。

①たまたまうっかり忘れただけの人

②根がルーズで、約束や期限を守れない人

③本当にお金がない人

 

①はそのまんま。ただのうっかり。主に更新月に多い。

更新料を払ったことで当月の家賃を払ったと勘違いしてしまう。

(更新月は賃料を2ヶ月分払うことになるので)

当然だが、すぐにこちらが気づいて連絡すればすんなり支払ってくれる。

この手のタイプは何の脅威でも無い。

 

②は多少面倒。

もともと約束とか期限とかに対してルーズなので、しょっちゅう遅れる。

そういう人なので、人間的に問題のある人も多いしお金に困っている人も多い。こじらせると次に説明する③になり得ることもある。潜在的には脅威だと言えよう。

 

期日を過ぎて払ってくる人もいれば、こちらが催促するまで払わない人もいる。

おそらく「万が一忘れてくれたらラッキー」とでも思っているのだろう。

そして催促の電話をすると、まさに今気づいたようなリアクションを取る。

「あ!払ってませんでしたっけ?うっかりしてました!」なんて。よくまぁ毎月毎月うっかりするもんだ。

トボケル人もいる。

「あれ?払ったはずですけど。入ってなかったかなー?」とか。

 

トボケル人に多い言い訳は主にこの2つ。

・払ったと思ったら銀行のエラーで送金できていなかった。

・間違って全然違う人に送っていた

 

え、違う人に送るって、ある!?

送金エラーはともかく、違う人に送ったって、ありえます?

ネットだろうがATMだろうが払込票だろうが、名義人が表示されるわけだから、普通気づきますよね?あ、名前違うなって。そこを無視して、エイヤ!と振り込むわけですか?そんなことって起こりえるのか?と思うけれど、こと滞納している人に限っては、そんなミスをするようだ。

 

もう心の中では「またか。。。。」ですよ。

でもそこで「本当なんですか?」とか「そんなことあり得ます?」なんて疑いの目を向けてはいけない。こっちも一緒になって話に乗っかる。そして一緒になって、

「え、大変じゃないですか!ちゃんと戻るといいんですけど。。。」

とか

「あー。みずほ銀行とかね、よく止まりますからね。困ったもんです。」

とか、話を合わせる。あっちのトボケた演技にこっちも乗っかる。

心の中では「いい加減にせーよ!」と毒づいていても、同情する素振りを忘れてはいけない。なぜなら一番大事なことは、一刻も早く払ってもらうことなのだから。

嘘を見破って相手に恥をかかせても何の意味もない。気分を害して振込が遅くなることは避けたい。

なので、ただただ穏便に。ただただ確実に。

賃料回収のためなら嘘に乗っかることも、話を合わせることも、なんてことはないのである。

 

で、最後に恐怖の③。

これが一番怖い。

終わりの始まり。

家賃が払えない人の行く末はだいたい、

「夜逃げ」

なんですね。

上記②をひどくこじらせるとこの結果を招くことになりかねない。

なので私達の仕事は②のうちに脅威の芽を摘んでおくこと。転居を促すとか、他を紹介するなどして。

 

 ところが中にはそれをすり抜け、この手段を取ってしまう人がいる。この仕事をして十数年経つが、片手で数えられるくらいの人数がいただろうか。

 

払えないならもっと安い所に引っ越せばいいじゃないか、と思いますよね?

言うのは簡単なんですがそれが出来れば苦労もないんです。

賃料が払えないほど困窮している人は当然、引っ越し費用も無いんです。

だからその場所から動けないんですよ。例え賃料が払えなくても。

でもそうすると不動産屋も大家さんも黙ってはいられないから、攻撃の手が強くなる。何度も電話したり、手紙を出してみたり。

で、そういう人ってだいたい電話にでない。あんまり聞かないですよね、滞納してるのに電話はちゃんと出る人って。もう何を言われるのか分かっているのだから、絶対出ないです。

 

もうだんだんと、いやーな予感。

 

 音信不通になって、しばらく経って部屋に入ると(大家は入る権限ありますから)荷物やゴミだけ残されて、誰もいない、と。

綺麗さっぱり空にして出て行ってくれる人もいます。これはまだ不幸中の幸い。

荷物やゴミが残されていたりすると大変ですよ。その処分代誰が払うのか。

 

本人は当然連絡も取れないしどこにいるかも分からないし、無理です。

連帯保証人も、住所が変わっていたり電話番号が変わっていたりで、難しいです。

そもそも繋がったところで、親切に払ってくれる人なんて、いませんでした。

そもそも、偏見かもしれないけれど、こういう問題起こす人の連帯保証人って、やっぱり同じような人なんです。親も然り、親族も然り、知り合いも然り。

だから、本人に代わって払ってもらうって現実的には難しいです。じゃあなんのための連帯保証人なんだってなりますけど。そのために今では「保証会社」を挟んだ契約が多いわけですけど、これは今は割愛。

 

もっとも、裁判なり何なりして法的に請求することはできるけれど、

「無い袖触れない」という言葉の通り、あちらにお金がなければいくら請求したって無駄なんです。それどころか弁護士費用や裁判費用がかかるだけで、元々のマイナスが更にマイナスになるだけ。だから大家さんも泣き寝入りするパターンが多い。

 

もしかしたらこれを読んで下さっている方の中に「お!請求されないんだ、そうなんだラッキー!よし夜逃げしよう」なんて思っている方がいたらちょっと待って下さい。

中にはいくらマイナスになってもいいから、相手を痛めつけたいという理由だけで裁判する大家さんもいます。大家さんて、桁違いのお金持ちが多いです。そういう人って、憂さ晴らしのために大金を払います。惜しみなく投入します。実際はっきり明言されたこともあります。「回収できないのなんて分かってる。いくらかかってもいいから裁判やって相手を懲らしめてやる!」って。

 

で話しを戻すと、こうなるともう最悪なんです。

三者三様みんな最悪。

大家も入居者も不動産屋もみんな疲れ果てます。

じゃあこうならない為にどうすればいいか。

まずは不動産屋からの電話に出ることなんです。

そして誠心誠意、謝って下さい。

 

 出たくない気持ちは分かります。

誰だって怒られたり文句言われたりすることが分かってる電話になんて出たくないです。でも電話に出ることが問題解決の第一歩になるんです。

電話にさえちゃんと出てくれれば解決の方法を探してあげることができる。

例えば大家さんに賃料を下げて貰う。

例えばもっと安いところを探してあげる。

大家さんだって、今までの滞納分を踏み倒され、かつ負債を残されるくらいなら減額に応じようって気にもなるんです。不動産屋も、後々大変な後始末をするくらいなら仲介手数料無料にしても他を探してやろうという気にもなるんです。

 

この仕事はシステムが機械的に処理しているわけではないのです。

大家も不動産屋も人間なんですから、真剣に謝って真剣にお願いされれば、無理を聞くこともあるんです。協力できることは協力してやろうって、気になるんです。

 

でも電話にでないと。

こっちも人間ですから頭にきますよ。

ただでさえ重大な契約違反をしているのに電話にもでないなんてフザケルナ!!と。

そうすると大家からも不動産屋からも責められ、結果、にっちもさっちも行かなくなって夜逃げに行き着くと。これはみんな不幸になるだけ。

 

なので賃料の支払いに困っている皆さん。

夜逃げのスケジュールを立てている皆さん。

そこまで困窮する前に、早まる前に、不動産屋に相談して下さい。